著名投資家の知恵

「再帰性理論」 PAGE1/12

from Conference Speach Delivered April 26, 1994 by George Soros
to the MIT Department of Economics World Economy Laboratory Conference Washington, D.C.

ルディ・ドーンブッシュさんは、私をこの会議に招待したとき、どんな内容の話をするかについて、私に自由に決められるようにしてくれました。

したがって、これから話す内容は、私にとっては大変魅力的な内容なのですが、しかし他の人にとっては、そうではないかもしれません。

議題は、私自身が考案した、「再帰性理論」に関するものです。

この理論は、私にとって、お金を稼いだり、またはお金の本質を解き明かすことの手助けしてくれました。しかし、世間からは、ほぼ真剣に受け取れらていないものです。

これはとても奇妙な状態です。

私はこのことを非常に、深刻すぎるほど深刻に受け止めています。
にもかかわらず、私が実際に真剣に取り入れ、意思決定プロセスのなかで信頼をおいているこの理論は、ほぼ完全に世間から無視されています。

私が1987年に発行した「The Alchemy of Finance」の中で、この理論について詳しく書いています。

そして、この理論は現実と照らし合わせて、ほとんど批判的な調査結果はありません。

ここ数年は絶版状態でしたが、私の知名度(悪名とは言わないで下さい)が上がるにつれて需要が増し、現在は再発行されています。

このことは「再帰性理論」について真剣に考える良い機会であると思っています。


私は先週、会議の前に証言をするように言われました。
これから私は、この証言をどのように始めたかについて述べます。
証言は次のようなものです。

「まず最初に、私は一般に認められている理論とは基本的な部分で見解の相違があるということを述べなくてはいけません。一般に認められている理論というのは、金融市場は均衡状態にあるという傾向があるということ、そして正しく将来の価値を織り込んでいるということです。

私は異なった理論を用いてファンドの運営をしています。その理論とは、金融市場は、それ自身が市場へ影響を与えてしまうため、将来を正しく織り込むということはできないという理論です。
ある特定の状況下では、金融市場は、それ自身が再帰的に、いわゆる、経済の基本部分といわれるような部分へ影響を及ぼすことがあります。

そして、それが起こると、市場はダイナミックに不均衡状態に入って行き、効率的市場の理論で語られる通常の状態とは、全く異なった振舞いを始めます。
そのような急上昇/破壊のシーケンスは頻繁には起こりませんが、それが起きた場合、それらはちょうど経済の基本部分へ影響するので、非常に破壊的である場合があります。」

会議の前には私の理論を述べる時間がなかったので、私は、今、この理論を述べるために、虜になっている聴衆を利用しています。

私はあなた達に非常に理論的な議論を押しつけることについて謝罪します。

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