著名投資家の知恵

「再帰性理論」 PAGE3/12

from Conference Speach Delivered April 26, 1994 by George Soros
to the MIT Department of Economics World Economy Laboratory Conference Washington, D.C.

古典的な経済学は、ニュートン物理学をモデルとしていました。
この古典的な経済学によると、経済は均衡状態にあろうとし、微分方程式によってそのように導かれます。

このモデルが成功するために、古典経済学の理論は市場関係者が完全な知識を持っているということを仮定しました。

完全な知識とは、市場関係者の考えが事実と一致するということを意味し、従って、それらを無視できるということになります。

しかし、残念ながら、現実は理論に全く従いませんでした。

均衡状況が最終的な結果を表していて、均衡からの乖離が一時的なノイズを表したと表現すれば、ある程度、現実と理論の食い違いをなくすことができます。

しかし、ついに完全な知識という仮定を捨てざるを得ませんでした。

そして、それは経済学に関するタスクが供給と需要との関係を研究することであると断言したロンドンスクール・オブ・エコノミクスのライオネル・ロビンス教授(私の教授です。)によって発明された方法論に置き換えられました。

その方法論とは、実際の需要と供給を考慮するものです。
そして、この理論によって、何とか均衡理論は現実の猛威から今日まで保護されてきました。

私は金融市場に関する一般的な説明について詳しく知っているという訳ではありませんが、私が知っている範囲では、金融市場の一般論は古典経済学によって確立されたアプローチを維持し続けています。

これは、金融市場が本質的に受け身の役割を持っていると考えられている事、金融市場は将来の価値を織り込み、恐るべき速さでその処理をしているという事を意味します。

そこには一種の複雑な魔法があります。
それはつまり、市場関係者の全ての人が、これまでのどんな優れた人よりも遥かに優れているという魔法です。

私は、金融市場がメカニズムについて、この解釈が全く歪められていると思います。

このことは、私が効率的な市場理論と現代ポートフォリオ理論に慣れ親しんでいないかということの理由であり、基本的に欠点がある原理に基づいた、偏見をもった、派生的な意見を取っているかという理由でもあります。

もうひとつ理由がありました。
それは私が数学がかなり苦手であるということです。

back next

inserted by FC2 system