著名投資家の知恵

「再帰性理論」 PAGE4/12

from Conference Speach Delivered April 26, 1994 by George Soros
to the MIT Department of Economics World Economy Laboratory Conference Washington, D.C.

あることを除いて、これほど明らかに間違った考えが広く広まったということは奇妙に思えるかもしれません。
あることとは、つまり、社会の出来事についての理論の全てが、なにかある方法でゆがめられているということです。

そして、それは本質に根ざした私の「再帰性理論」の始まりでもあります。

市場関係者は正しい知識の元に動いているわけではありません。

知識は、市場動向について言及する声明の如何にかかわらず現れる事実を予想します。

しかし、関係者がいるということは、人の決定が結果に影響を及ぼすということを暗示しています。

従って、市場関係者が対処しなければならない状況は、独立して事実を形成することはできず、事実とは市場関係者の意思によって形成されるのです。

考えと現実の間には能動的な関係があり、これは自然科学や時には間違うこともありますが、経済学でも理解されている唯一無二の受動的な理論と同様なのです。

私は受動的な関係にある機能を「認識的機能」、能動的な関係にある機能を「参加的機能」と呼んでいます。これらは、私が「再帰性」と呼ぶように相互に作用しあいます。

「再帰性」というのはお互いにフィードバックしあうメカニズムのことです。
それは、関係者の考えと現実がお互いに影響試合ながら決して同じにはならないというプロセスの中で、現実が関係者の考えを形成し、また、関係者の考えが現実を形成していくということです。

知識というものは、観測と事実、思考と現実の一致を意味しますが、それはこの状況では不可能なのです。

大事な要素がかけており、一致を見るには、関係者の予想と実際の状況には本質的に相違があります。

私が「関係者バイアス」と呼ぶこの相違は、実際の出来事を予測するのに非常に役に立ってくれます。

このことは「再帰性理論」の最も大事な要点です。

back next

inserted by FC2 system